1933年7月末、サンフランシスコの若手弁護士Peter Starr(Walter A. Starr Jr.)は、単独で2週間のシエラネバダへ探査に出かけました。当時Peterは完成したばかりのJohn Muirトレイル、及びシエラの山々のガイドブックを作っていました。8月7日に、パリセード山群近くのGlacier Lodgeで待ち合わせをしていたPeterの父Walterは、予定日を数日経ってもやってこない息子に何かが起きたと確信し、捜索願いを出しました。やがて、Peterの車がMammoth Lakes近くのAgnew Meadowsで発見されます。目撃証言から、Peterが付近で遭難した可能性が高まります。そして、Ediza Lakeをベースキャンプにし、Ritter-Banner-Minaret山群で、当時の有名な登山家Norman ClydeやEichorn、Dawsonらも含む大規模な捜索が開始されました。PeterがMt. Ritterに残したメモや、アイゼン、ピッケル、カメラなどがベースキャンプそばで見つかったものの、Peterの行方は依然わからず、やがて捜索は打ち切られることになります。Norman Clydeは、あきらめずただ一人山に残り、単独でMinaret付近での捜索を続け、ついに8月25日にPeterの遭難現場を発見しました。そして、そのニュースはメモリアルサービスを準備中のStarr家に、当日夜遅く伝えられました。
当時の(綺麗な)モノクロ写真、関係者へのインタビュー、詳しい調査に基づいて書かれたドキュメンタリーです。山の遭難というと暗いイメージが思い浮かびますが、そのような感じを全く与えない、すばらしい本に仕上がっています。遭難から一年後、Peterの遺稿は父Walterの手により仕上げられ、”Starr’s Guide to the John Muir Trail and the High Sierra Region”として発行され、その後多くの人々に愛用されるようになりました。
Missing in the Minarets
The Search for Walter A. Starr, Jr.
William Alsup著
Yosemite Association出版
ISBN: 1-930238-18-5 (softbound)
ISBN: 1-930238-08-8 (hardbound)