ヨセミテへ


 「昼食のあと、私は急いで近くの高い場所へ行ってみた。そしてインディアン・キャニオンの西側の尾根の上から雄大な山なみを楽しんだ。それはすばらしいものだった。眼下にはメルセッドの谷の上部が開けており、さらに崇高なドームと峡谷が続く。上に広がるうす暗い森、そして空に向かって鋭くそびえ立つ輝く山頂が見えた。すべての姿は光り輝き、そして周囲に放たれる美しさはまるで炎から出る熱線のように私の肉と骨に流れ込んだ。日の光がすべてを圧倒していた。垂れこめた静けさを破る風のそよぎはない。
 こんなにものすごい景色を、こんなにもはてしなく豊かで崇高な山々の美しい姿を、私はかつて見たことがなかった。」

「はじめてのシエラの夏 」ジョン・ミューア著・岡島成行訳/宝島社


 ヨセミテへの二度目の旅を終えて、あらためてこの本を読み返しています。ジョン・ミューアが1868年にはじめてこの地を訪れて、すでに130年もの歳月が過ぎているにもかかわらず、ヨセミテ渓谷はその間変わることなく光り輝いて、まるで神さまの手のひらのように訪れる私たちを包み込んでくれました。
 今年は思い切って丸一日かけてハーフドームに登り、その頂に立ちました。トレイルの途中知り合った世界のあちこちの仲間達とお互いに健闘を讃えあって、ここはただの「ナショナル・パーク」を超えた「インターナショナル・パーク」なんだと思いを強くしました。(西村仁志 1996.9)

Spirit of Yosemite

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この作品(22分)はYosemite Fundの寄付によって制作され、毎日ヴァレー・ビジターセンターで無料上映されています。その内容、映像ともにすばらしいもので、ぜひご覧になられることをお勧めします。
「ジャクソンホール野生生物フィルムフェスティバル」では”Best Non-Broadcast Program”を受賞しました。ビデオ化につづいてDVD化もされています。($19.95)
30分以上の特典映像がつくほか、English, Spanish, French, German,日本語の各言語に対応しています。オンラインストアからも購入可能できます。

“YOSEMITE ROAD GUIDE”とロードサイド・マーカー

“YOSEMITE ROAD GUIDE” & Roadside Markers



YOSEMITE ROAD GUIDE

公園内の道路を走っていると、「V5」とか「G5」というサインを見かける。これは「YOSEMITE ROAD GUIDE」というガイドブックに対応したロードサインである。
頭文字のアルファベットは
B ビッグオークフラットロード(120号線西)
G グレイシャーポイントロード
H ヘッチヘッチー・マザーロード
M エルポータル/マーセドロード(140号線)
O オールド・ビッグオークフラットロード
S マリポサグローブ
T タイオガロード(120号線東)
V ヨセミテ渓谷
W ワワナ・フレズノロード(41号線)
数字は各ポイント順につけられている。眺望ポイント、川、森、キャンプ場、草原、トレイル入口などさまざまである。
このガイドブック「YOSEMITE ROAD GUIDE」の入手はビジターセンターやギフトショップで。クルマでヨセミテに出かける人はこのガイドブックで楽しさが2倍になるはず。3ドル5セント。


ヨセミテの4コマ漫画

Fur and Loafing in Yosemite





 ヨセミテ・アソシエーションからの新刊「Fur and Loafing in Yosemite」漫画家Phil Frankがサンフランシスコ・クロニコル紙に執筆しているユニークな風刺のきいた4コママンガ。ユニークなパークレンジャー、キャンプ場と共生し大自然の生活を楽しむクマたち。「チョー普通の」キャンパーなどが登場する。詳細はヨセミテ・アソシエーションのこのページで。

加藤則芳「ジョン・ミューア・トレイルを行く」を読む

Noriyoshi Kato “John Muir Trail”
 
この本のもとになった作家−加藤則芳さんのジョン・ミューア・トレイルの旅についてはNHK-BSで「アメリカ自然保護の父ジョン・ミューアの道を行く」(1995年9月)として放映されたもの。ちょうどその夏に私は初めてのヨセミテへの旅へ出かけて帰ってきたばかりだったので、この映像は鮮烈なものだった。
 ジョン・ミューア・トレイルは、この本でも詳しく紹介されている通り、ヨセミテ渓谷から、セコイア国立公園まで延々340キロにわたって整備された原生自然トレイルである。
 加藤さんは実はこの前年にもこのトレイル全行程踏破を試みているが、両足首の疲労による捻挫によってあえなく「痛恨のリタイア」を喫している。このことも包み隠さず、この失敗で得た教訓を活かして、2年目のチャレンジを図って成功したのだ。
 よく誤解されるのだが、「バックパッキング」と「キャンピング」はイコールではない。「キャンピング」は巨大トレーラーのキャンピングカーでの生活までもが含まれるが、「バックパッキング」には妥協がない。自分の背中に背負える分だけの装備が全てで、まさに家を全部背負って歩くわけだ。私自身は重い荷物を持って歩く「バックパッキング」はあまり好きではない。キャンプ場に定住して毎日軽装デイパックで、あちこち歩き回るスタイルがいい。トレイルでも軽快で楽しい。しかしこの本を読むと、重い荷物を背負ってでも出かけてみようかとという誘惑にかられる。
 この本でも紹介されているが、ヨセミテのトレイルやキャンプ場で出会うのはアメリカ人ばかりではない、ドイツ、フランス、イギリス等からきた欧州人もいっぱいいる。日本人はどうしているかというと、日帰りツアーバスでヨセミテ滞在時間は3時間。自分の足で歩くのはレストランとギフトショップの中だけという悲しい旅だ。
 話が横道にそれたが、この本は実践資料類も充実しており、ヨセミテ国立公園はもちろん、シエラの山々をバックパッキングで歩きたい、キャンプしたい方の必読書としてお勧めする。この本をたよりにシエラの山々を歩きまわる楽しい人たちが増えてほしいものだ。もちろん”ヨセミテ国立公園大好き”もよろしく。(平凡社・2200円)