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カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)には 1960 年代の開学まもない時期に始まった学生菜園プロジェクトにルーツを持つ有機農業の研究・教育の歴史があり、また近郊のカリフォルニア中央沿岸部は一大農業生産地帯となっている。一方で全米の大学においても寮費や大学近隣の家賃相場高騰、そして高額の授業料等によって学生の食と住をめぐる事情は悪化し、食住のベーシックニーズに不安をかかえた学生が増加してきており、UCSC も例外ではない。
このような背景をもとに2003 年に学生から発案され、活動が開始された学内の食状況の改革プロジェクトである「Farm–to–College」は、学内そして学外の関係者をつないで、学生への新鮮な食材の提供、大学食堂での「地元産、オーガニック、社会的に公正な」食材の使用、農や食と持続可能性に関する学生たちの体験と学びの機会づくりなど年々その活動を進めてきた。本稿ではこの取り組みの背景や発端、そして活動内容や他大学への波及のプロセスについてソーシャル・イノベーションの観点から明らかにするものである。