9.革命後―新国家におけるナショナリズムの行方
この章では、革命後の新国家におけるナショナリズムの変遷とその役割 を分析しています。著者は、ナショナリズムが単なる独立運動のスローガンではなく、新国家の統治システムや国民意識の形成に深く関わることを強調し、革命後の国家建設における課題を考察しています。
1. 革命期のナショナリズムの役割
• 革命期にはナショナリズムが統合の手段として機能し、異なる民族・社会階層を結びつける。
• 共通の敵(植民地支配・旧体制)に対する抵抗として、ナショナリズムは強力な動員の力を持つ。
• しかし、革命成功後は**「反対のためのナショナリズム」から「国家建設のためのナショナリズム」へと変容する必要がある。**
2. 革命後のナショナリズムの課題
• 統一の維持:革命期には共通の敵に対する団結が生まれるが、独立後は内部分裂(民族・宗教・地域間対立)が表面化する。
• 正当性の確立:新政府は国民に対して「なぜ自分たちが統治すべきなのか」を正当化する必要がある。
• 経済・社会開発との関係:ナショナリズムは経済政策や社会福祉政策と結びつかなければ持続しない。
3. 国家のイデオロギーとしてのナショナリズム
• 革命後の国家は、ナショナリズムを国家イデオロギーとして制度化 する。
• 教育・メディア・法制度 を通じて、国民に統一されたナショナル・アイデンティティを植え付ける。
• 例:インドネシアの「パンチャシラ」や中国の「社会主義愛国主義」。
4. ナショナリズムの多様性
• 文化的ナショナリズム:民族的伝統や言語を重視(例:アイルランド、インド)。
• 経済的ナショナリズム:外国資本の排除、自国産業の発展を重視(例:ラテンアメリカの輸入代替政策)。
• 政治的ナショナリズム:権威主義的体制を正当化する手段として利用(例:冷戦期のアフリカ諸国)。
5. グローバル化とナショナリズム
• グローバル経済の進展により、ナショナリズムは経済政策と衝突することもある。
• 国際機関(国連、IMF、WTO)の影響が強まる中で、新国家はどのように「独立性」を維持するかが課題となる。
• 多文化主義との関係:国内に複数の民族・宗教が共存する場合、ナショナリズムの在り方はさらに複雑化する。
6. 結論
• 革命後のナショナリズムは、「独立のための武器」から「国家統合の基盤」へと変容する。
• しかし、それが機能するかどうかは経済発展・社会統合・政治的正当性の確立に依存する。
• ナショナリズムが持続的な国家発展の基盤となるか、逆に分裂を招くかは、国家の運営次第である。
この章では、革命後の新国家におけるナショナリズムのダイナミズムを明らかにし、それが単なるスローガンではなく、具体的な国家建設の課題と密接に結びついていることを示しています。