SF Zen Center Green Gulch Farmのこと・その2

先日公表した論文「アラン・チャドウィックの菜園プロジェクトとカリフォルニアのオーガニック運動への影響」(http://doi.org/10.15097/00002852)に関連するグリーンガルチ農園の話(その1)の続きです。

画家の小田まゆみさんはグリーンガルチ農園、そしてサンフランシスコ禅センターの創設期のことを著書「ガイアの園」のなかで触れています。

本書のあとがきには

「私は仏教徒の家から逃れて、ニューヨーク、ボストン、プリンストンと移り住んだ末に、グリーンガルチ農園に「ガイアの癒しの園」をみつけました。農場での禅修行は中国の唐時代の「無門関」を思わせる自由闊達なエネルギーであふれていました。その園で心も体も癒された私は、鹿に導かれて、ある日垣根の向こうに出ました。「私」という垣根を外した向こうには、大きなひとつづきの世界が待っていてくれました。アメリカでの禅修行は、私に人生の門を自由自在に出入りできる術を教えてくれました。」

と綴っています。
サンフランシスコ禅センターを創設した鈴木俊隆老師、そして老師の亡き後に後継者となったリチャード・ベイカー老師が、檀家のない禅センターの財政自立と、修行者の生活資金の確保のために、パン屋の「タサハラ・ベーカリー」、ベジタリアン・レストラン「グリーンズ」などの事業、そして修行道場と農園をかねた「グリーンガルチ(別名:蒼龍寺)」を開いたのでした。まゆみさんは、頭をそったアメリカ人の坊さんや尼さんたちが畑を耕し、パンを焼き、ウェイターとして働く姿をみて、ここは「人生の実験場にいるようでした」と書いています。

アラン・チャドウィックはグリーンガルチの最初のマスターガーデナーであったわけですが、わずか1年足らずで辞職します。本書ではアランのことは出てきませんが、その後を受け継いだウェンディ・ジョンソンのこと、また近隣に生まれ育った先住民の血をひくハリー・ロバーツの話が出てきます。このハリーが亡くなる数か月前に日本から『わら一本の革命』で知られる福岡正信さんが訪問し、「たちまち意気投合した」というエピソードも語られています。