コロナ禍のもとでの大学授業について

(アイキャッチ画像は国立感染症研究所WEBサイトより)

■短い準備期間でしたが、しっかり対応してきました

私の友人には大学生のお子さん、そして今後、大学に進学を予定されているお子さんをもつ方々も多くおられますので、コロナ禍のもとで学生への授業はどのように行われているかを、お伝えします。

新型コロナウイルスの感染は3月から拡がりはじめ、私の勤務先の広島修道大学では卒業式や入学式は中止、さらに県内ではいくつかの感染クラスターが報告されるなど、危機感が高まりました。本来は4月6日に授業が開始されるはずでしたが、4月20日への延期、その後、前期はすべて「非対面(オンライン)」型への切替えと、授業開始を5月7日への再延期することも決定しました。4月下旬からの僅かな期間で、すべての教員がオンラインでの授業対応をせねばならない事態になったわけですが、どうしてもオンラインに置き換えることができない圃場(畑)での実習などはあるものの、教室内でやっていることなら、ほぼWEBツールを使って出来ています。学生からのフィードバックも、決して悪くはなく、集中して受講し、しっかり課題に取り組んでいるという印象です。

■大教室での講義型授業

今期、私が担当するいちばん大きなクラスは受講生が210名います。私の大学では「Moodle」というWEB上の学習管理システムを利用しています。これによって

・授業資料(文字、音声、画像、動画などマルチメディア)の提示

・アンケート、課題や小テスト、レポート等の提示と学生から提出物回収

・採点と学生へのフィードバック(個別・全体)
・メッセージやチャット(文字)のやりとり

が、可能です。これによって学生と直接対面すること以外はたいていできます。

私の場合は、講義資料はパワーポイントで作成し、PDFに変換したものです。またこの資料のナレーションをボイスレコーダーで録音してMoodleにアップロードしています。学生はPDFを参照しつつナレーションを再生し受講します。これらの資料はその科目の時間割の15分前から開示しています。
パワーポイントにナレーションを埋め込んで自動再生とか、動画ファイルに書き出したりする方法もありますが、学生にトラブルなく受講してもらうためにはできるだけシンプルでローテクな方法が良いと思うのと、動画化するとデータ量が増大します。


90分授業の残り20分ほどは、課題を提示します。学生はこれらをMoodle上で記入、提出して、この回は終了です。これの提出期限は授業時間内ではなく、当日の23:59としています。
つまり、この方法だと当日中であれば、受講自体も時間割通りでなくても可能(オンデマンド型/非同期型)ということになります。

また、時間割通りの90分はビデオ会議システム「Zoom」(これは今回有名になったので、ご存じの方も多いと思います。)を立ち上げて、私は待機しています。質問や相談のある学生はこの間いつでも入退室し、マイクをオンにして喋ってくださいと案内しています。オンデマンドで受講する直前、受講して課題記入する前、課題記入して終了する前などに、私と画面上で対面して喋ることもできるわけです。これはいわゆる「リアルタイム型/同期型」となります。

ずっとこの形式でやるかというと、そうではありません。回によってはリアルタイム型/同期型で行い、ディスカッションを入れたりすることもあります。

こうした授業の「仕込み(準備)」ですが、私の場合は毎年使ってきているパワーポイントファイルを加筆修正したり、組み替えたりすることと、ナレーションの録音、学生への課題の設定です。1回あたり数時間かけることになるわけですが、新規のテーマを取り上げたりする場合には半日以上かけることになります。

それから、学生との双方向性を担保するものとして、課題の最後の項目は「先生あのね(近況報告、疑問、ボヤキなど何でも書いてください)」としています。これは学生の状況を知るのに有効で、回答や情報提供、相談が必要なものは、メッセージ機能を通じてやりとりしています)


例えば、こんなことが書かれています。

・毎日のトレーニングで腹筋が割れてきました。

・就活中なのですが面接のため東京に来てくれと言われたのですが行くべきか迷っています。

・最近は気分転換に早く起き散歩をしているのですが夏を感じてきています。アパートの近くに田んぼがあるのですが、カエルも鳴き始めました。そろそろ梅雨が来て夏ですね。

・バイトくびになりました。

・家にいても毎日やることが一緒なので、家にあるピアノを弾き始めました。ピアノを弾ける男の人はかっこいいと思うのでそのようになれるように頑張りたいです。

・オンデマンドなので繰り返し聞けて理解を深めやすいです。

・最近は、緊急事態宣言が解除されて寿司を彼女と食べに行きました! なんか、感動するぐらい美味しかったのが記憶に残っています!

・人と話さない時間が長すぎてコンビニ店員にお礼の言葉を返そうとした時に話し方を忘れていてビックリしました。


・とても興味深い講義でした。次もちゃんと聞きたいと思います。

・1人で授業を受けるのが少しずつ慣れてきました。

・最近は小テストやレポートなどがたくさんでて大変です。オンライン授業は初めの頃よりかは慣れてスムーズに参加できるようになってきました。セブンイレブンのマンゴーアイスが美味しいので先生も是非。

・先生の口調が優しくて好きです

・最近は、大学が通学するものということが不思議に思える感覚に陥ってます。

・自粛期間でバイトの人が増えてなかなか思うようにシフトに入れません。バックを買ってまだ1回も配達してないUber eatsで稼ごうと思います。

などなど、多様です。実はこの「先生あのね」は私が大学で授業を担当するようになって以来、ずっと書いてもらっているのですが、まったく同じように出来ているのと、オンラインになることによって、返答が必要な場合に本人に即座に返すことが可能になっています。それとペーパーレスです。これまではこれが毎週200枚提出されていたわけですから、学期末には1科目あたり2000〜3000枚にもなるわけです。


■ゼミナールなどの小人数クラス

ビデオ会議システム「Zoom」を使って、「リアルタイム型/同期型」で行っています。原則、90分間全員完全顔出しです。そして、昨年度まで対面でやっていたときも同様ですが、ゼミの進行役は私ではなく、学生が順番に担当します。私はコメンテーターの役割です。

ゼミですから学生からの発表がありますので、発表資料の共有に学習管理システム(LMS)を併用することになるのですが、ゼミでは「Google Classroom」というGoogleが提供するシステムを利用しています。(Moodleよりも簡便)

またZoomには「ブレイクアウトルーム」というグループ討議を行える機能があるので、ゼミをさらに小人数にわけて(3人組)議論を行って、全体に発表というようなセッションを行うことができています。

■コロナ後はいったいどうなる?

もちろん大学は、授業を行い、受講するだけの場所や機会ではありません。図書館や学食、部活やサークルなどの課外活動、教員との交流、学生同士の交流など、学修と生活の多様な営みが行われるところです。こうした機能や機会は注意しながら、しだいに復活していくことと思います。また今回オンラインでの授業の経験からは、今後対面授業ができるようになってからも導入できることがらが多くあるように思っています。通常の授業もライブ配信し、教室でも自宅でも、どちらでも受講可能としたり(遠距離通学の学生はかなり助かることになると思います)、オンラインでのゲスト講義の講師は世界中から呼べます。台風襲来時には早めに登校停止の決定をしてオンライン授業に切り替えることも可能です。

この数ヶ月、教員、学生そして大学組織も多くのことがらを経験したわけですから、ぜひこうした「プラス」の面にも着目していくべきと思います。