2019年8月、ハワイ島に滞在中にこの本「Street Zen」について投稿しました。実はこの本は先日公表した論文「アラン・チャドウィックの菜園プロジェクトとカリフォルニアのオーガニック運動への影響」(http://doi.org/10.15097/00002852)の参考文献に挙げています。
この前月(7月)、サンフランシスコ禅センターの農場グリーンガルチを訪問したときに、チャドウィックの最後の5ヶ月を知るWendy Johnsonさんから、Issan Dorseyとこの本についての話が出てきたのでした。翌月にハワイ島では小田まゆみさんにも同じ話を伺って、まゆみさんの書斎からこの本をお借りしたのでした。この本の題字はまゆみさんの字です。
(帰国後あらためて自分でUSのAmazonから購入しました。)
Issan Dorseyは1933年カリフォルニア州サンタバーバラ生まれ。本名Tommy Dorsey, Jrといい、Issanは「一山」という僧名です。見たとおりのイケメンですが、若い頃からダンスや舞台に目覚め、また恋愛対象は男性でした。高校を出て海軍に入隊しますがゲイであることが発覚して、韓国からアメリカ本土にパートナーともども送り返され、強制除隊させられます。
その後、職を転々とするも、女装パフォーマーとして全米各地のナイトクラブ等で出演し、人気を博しました。1960年代にはサンフランシスコでドラッグの売人にまで落ちぶれますが、サンフランシスコ禅センターで鈴木俊龍老師の指導のもとで坐禅を始めたのでした。
Issanはサンフランシスコ禅センター、そしてBig Sur近くに禅道場としてつくられたタサハラ禅マウンテンセンター、そしてグリーンガルチの3箇所それぞれのキッチンで料理僧を務めます。
アラン・チャドウィックのグリーンガルチ滞在時に二人は出会い、仲良くしていたらしい。奇しくも舞台演劇人、そして海軍軍人でもあったという共通の経歴があるふたりが、禅道場で出会うという不思議な縁です。
この本でチャドウィックのことはこのように記されていました。
トミー(Issan)はこの仕事(料理僧)を楽しんだ。実際、彼の料理はグリーンガルチで上達した。有名な園芸家のアラン・チャドウィックによる、ここの農作物のおかげだ。
Issan”その頃から美味しい料理を作るようになりました。なぜかわからないけど、料理の仕方は知らなかったんです。少し習っただけー私は禅料理のことは知っていましたが、でもアラン・チャドウィックがこの農場でつくる野菜で自己流の料理をするようになったのです。人々はいつも私を褒めてくれますが、それは簡単です。彼が育てた美しい野菜たちを使っているからです。”
Issanはその後、ゲイ仏教徒クラブ、そして彼らのためにHartford Street Zen Centerを設立、またここはHIV患者たちの最後を看取るホスピスにもなった。彼自身もHIVによる合併症によって1990年9月6日に亡くなりました。