新刊のおしらせ『文化で地域をデザインする 社会の課題と文化をつなぐ現場から』(学芸出版社)

新刊書(共著)が出ました。松本茂章編著『文化で地域をデザインする 社会の課題と文化をつなぐ現場から』(学芸出版社)です。
自然体験観光(エコツーリズム)とインタープリテーションのことを書かせていただいていますが、カリフォルニアでの在外研究中に書いたので、事例部分は編者の松本茂章さん(静岡文化芸術大学文化政策学部教授)が京都府南丹市美山町に出向いて関係者への取材を通じて書いてくださいました。
また西村 和代 (Kazuyo Nishimura)も本書で「食育とコミュニティ形成」を書かせていただいています。

「文化で地域をデザインする」というお題をいただいたのですが、自然体験観光やエコツーリズムの舞台である自然豊かな場所や地域は「大自然」「辺境」「片田舎」さらには「文化果つるところ」とまで呼ばれてきました。このように「文化がない」とされるところで「文化で地域をデザインする」ことはできるのだろうかという問いから書き始めました。
私が通い続けているカリフォルニアのヨセミテ国立公園には「エル・キャピタン」という1000mも垂直にそそり立つ巨大な花崗岩の一枚岩があります。この岩そのものに文化が内蔵されているわけではありません。しかしこの岩は1958年に47日間もかけて初めて登攀され、以来60年余り、単独行やフリークライミング、スピードクライミングなど新たな挑戦の歴史が次々と刻まれています。こうしてこの岩は「世界中のロッククライマーの憧れ」となり、登攀という「行為」だけでなく、クライマー達の道具、ファッション、ライフスタイルなども含んだ「クライミング文化」のルーツになっています。こんな話を端緒に書いています。

松本さんは私が同志社大学大学院総合政策科学研究科の社会人院生だったときに、同じ共同研究室で机を並べていた先輩です。当時松本さんは読売新聞社のご勤務のかたわらの社会人院生で文化政策とアーツマネージメントについて研究されていました。私は環境教育の自営業の傍ら大学院に入学して自然学校の研究を始めたわけですが、その後松本さんも私も大学教員への道へと転進しました。以来15年ほど経過してお互いの研究がこのように重なってきたこと、面白いです。