都市におけるインタープリテーション(最初の1000字)

都市におけるインタープリテーション(最初の1000字)

人間は住まいをつくり、生産活動を行い、そして交換(商い)をする場所を集積してきました。他にも政治、信仰、学問、さまざまな求心力が人を集め、「都市(まち)」を形成します。商人やさまざまな技術をもつ職人、軍人、芸人、政治家、学者、聖職者など多様な人々がつどい、都市にはつねに新しい「しごと」が生み出されてきました。平野部や盆地、街道筋、水運に適した海辺や水辺にとどまらず、砂州の上や山上に築かれた都市、そして外的からの侵略に備えて高い城壁や深い堀を築いた都市もあります。このようにそれぞれの都市の成り立ちは地域の特性を活かしたいへん個性豊かなものです。それらは城下町や門前町、宿場町、港町、そして商業都市や工業都市、学研都市など、さまざまな発展をとげてきました。またその一方で、周辺環境の荒廃、企業の撤退、航路の廃止などから衰退してしまった都市もあります。

自然状態のままの場所や、農山漁村のような人間と自然環境の成熟した関わりのある場所や地域とは異なり、こうした都市は「人口や物質が集中したあるいは集中しつつある地域で、人間とのかかわりから見ると、絶え間ない人為の干渉にさらされており、人間と環境の関係が不安定[i]」であるといえます。都市の人口や生産活動を維持するためには、自然界から大量の水とエネルギー、そして食料をはじめとする物質の供給が欠かせず、また排水や排気・排熱、廃棄物は自然界に排出しなければなりません。また、ときに自然は猛威をふるい、都市に地震や暴風雨などによる災害をもたらすこともあります。都市は人工環境でありながら、完全に自然界と隔絶してその存在を維持することはできないのです。

人口の集中と環境の人工化を進めたことで、大気や水質の汚染、騒音や廃棄物の増加、生物多様性の減少、地域コミュニティの衰退など都市特有の様々な問題が生じてきました。しかし都市はこうした諸問題を抱えながらも、そこに生きる人々が創造的な活動をたゆまず続けてきたことで、さらに人々を惹きつける魅力を持ち続けてきたのです。

このような特徴から、都市におけるインタープリテーションが目指すものは、その都市の成り立ちを様々な切り口から浮き彫りにし、その持続可能な未来のあり方やここでの心豊かな人生について考える機会を提供することであると考えます。取り扱う内容としては、①都市という人工空間と自然との関わり、②都市の歴史・文化、③都市に生きる人々の「くらし」と「しごと」、④都市の持続可能な未来とその担い手としてのシチズンシップ(市民性)、という4つの領域であり、これらは別のものではなく相互に強く関連し合っています。

[i] 品田穣「環境教育の視点」(環境学習のための人づくり・場づくり編集委員会『環境学習のための人づくり・場づくり』ぎょうせい,1995)